数年前からすでに高い評価を集め、UKでもっとも期待されているアーティストのうちの1人、若干22歳のTom Misch(トム・ミッシュ)のデビューアルバム『Tom Misch / Geography』を聴きました。JAZZ、HIPHOP、ディスコ・ファンク、エレクトロをうまーく溶け合わせた、非常に完成度の高いアルバムです。
クラシック的な要素と現行音楽シーンの新譜要素、さらに万人に好かれるPOPさのバランスが絶妙で素晴らしい仕上がり。そして、そのバランスの良さ、聴きやすさに、De La Soul、Loyle Carnerをはじめとした客演陣の人選が最高すぎるスパイスとして加わっています。
good music好きからPOP music好きまで、多くの人に届くべきおすすめのアルバムです。みなさん是非。
UKの若き才能が届ける、気持ち良く響く上質なサウンド
James Blake(ジェイムス・ブレイク)あたりから若い才能が出てきまくりのUKシーンですが、そんなUKの中でも天才として早くからその才能が注目されていた22歳のTom Misch(トム・ミッシュ)。デビューアルバム『Tom Misch / Geography』は、シーンの期待に違わぬカラフルで気持ち良い上質なサウンドばかりでした。すべてにおいて完成度が高く、改めて22歳という若さに驚きです。
Tom Misch – South Of The River
アルバム序盤を代表するアップテンポな曲、良い意味でノリやすい曲という印象。ギターカッティングのキレの良さとバイオリンの響きが良い感じ。派手過ぎないキーボードのソロも気持ち良い。Tom Misch(トム・ミッシュ)のボーカルもちょうど良い。曲全体のバランスが素晴らしい。
Tom Misch – Movie
アップテンポだった「South Of The River」の次の曲で、そこから一気にスロウダウン。この急ブレーキのかけ方はズルイ。落ち着いたバラードに余裕で引き込まれてしまいます。bitchになった気分。
Tom Misch(トム・ミッシュ)のギターの気持ち良さ、スウィートなボーカルの良さはもちろんですが、使われる単語の種類が少なく簡単で聞き取りやすいリリックもすごく良い。英語が分からなくても自然と口ずさめまてしまう。狙ってるのか天然なのか、こういところもPOP層に響く要素な気がします。ちなみにPV内のビデオはTom Misch(トム・ミッシュ)の本当の家族みたいです。
Tom Misch – It Runs Through Me feat. De La Soul
客演にDe La Soul(デ・ラ・ソウル)。クレジット見た時点でこのセットはハマるやろうなと思ってましたが、ズバリ。裏打ちの気持ち良いリズムがループする中、ほどほどに温める序盤のTom Misch(トム・ミッシュ)。後半のフックでTom Misch(トム・ミッシュ)のコーラスにかぶせつつ、煽りながら登場のDe La Soul(デ・ラ・ソウル)。この時点ですでにめちゃくちゃカッコ良い。そしてJazzyなトラックと並走するスムースな気持ち良いラップ。ラッパーってカッコ良いな、と改めて思わせてくれる。さすがの一言です。
前半のTom Misch(トム・ミッシュ)ソロでのJazzyな曲を、De La Soul(デ・ラ・ソウル)のラップでJazzy HIPHOPにサンプリングしなおしたような展開がたまらない曲でした。De La Soul(デ・ラ・ソウル)にズバリはまるトラック。
この曲のあとのStevie Wonderの名曲「Isn’t She Lovely」のギターイントロカバーも続けて最高でした。こういう程よいPOPさ親しみやすさもTom Mischの魅力の1つ。
Tom Misch – Water Baby feat. Loyle Carner
Tom Misch(トム・ミッシュ)と同じくサウスロンドン出身のラッパー、Loyle Carner(ロイル・カーナー)が客演。Tom Misch(トム・ミッシュ)の過去の作品にも何度か客演していますが、この2人素晴らしく相性が良いです。下敷きにある強めのベースと鳴りの良い乾いたドラムがカッコ良いトラック。アルバム通して思いますが、派手すぎないJazzyなトラックを作らせたら素晴らしいですね。まさに老獪。22歳の老獪。Loyle Carner(ロイル・カーナー)ののらりくらりなテンションのラップもcool。De La Soul(デ・ラ・ソウル)とはまた違うテンションでJazzyな仕上がり。
個人的にLoyle Carner(ロイル・カーナー)自体すごい好きで、去年リリースしたアルバム『Loyle Carner / Yesterday’s Gone』もめちゃくちゃカッコ良かったです。グライムではなく、あくまでUK産のHIPHOP。クールさと音楽性をしっかり持ったラッパーです。そこまで大きく話題になっていませんが、去年リリースのHIPHOP作品の中でも隠れた名盤かと思っております。Tom Misch(トム・ミッシュ)も客演で参加。
このあとに続くアコースティックな「You’re On My Mind」がまた最高で、スロウダウンしながらゆっくり開けていくような気ん持ち良い曲。合わせて聴きたい。憧れの存在だというJohn Mayer(ジョン・メイヤー)っぽさも感じる曲です。
新旧問わず音楽好きに響くアルバム
『Tom Misch / Geography』、素晴らしくバランスの良い完成度の高いアルバムで、Tom Misch(トム・ミッシュ)の才能を存分に楽しめました。どこに出しても、どこに連れて行っても問題のないアルバムに仕上がっているのではないでしょうか。新旧問わず多くの音楽好きに愛されるべきだと思います。
クラシック感もある、新譜としての新しさもある、サウンドの深みもある、万人に好かれるPOPさもある。聴きやすさと奥深さが同居している感じと言いましょうか。そして、その聴きやすさに程よいスパイスを足すような、客演陣の人選も素晴らしい。特に、De La Soul(デ・ラ・ソウル)、Loyle Carner(ロイル・カーナー)、GoldLink(ゴールドリンク)というラッパーの人選は見事やなと思いました。cool感・hard感・black感あたりの、Tom Misch(トム・ミッシュ)にはない部分をしっかり補ってもらっている感じ。素晴らしい完成度です。
これからの気持ち良い春の季節にもぴったりかと思います。朝・昼にゆったり聴いても良し、夜にしっとり聴いても良し。その空間を気持ち良く彩ってくれるはず。個人的には夜派です。
JAZZとかHIPHOPとか全然聴かないけど、星野源のアルバム「YELLOW DANCER」めっちゃ好きですって人にもハマる可能性があるんじゃないかなぁと思います。洋楽への良いステップ。
『Tom Misch / Geography』
TRACK LIST :
- Before Paris
- Lost In Paris (feat. GoldLink)
- South Of The River
- Movie
- Tick Tock
- It Run’s Through Me (feat. De La Soul)
- Isnt She Lovely
- Disco Yes (feat. Poppy Ajudha)
- Man Like You
- Water Baby (feat. Loyle Carner)
- You’re On My Mind
- Cos I Love You
- We’ve Come So Far
Tom Misch(トム・ミッシュ)は2018年のサマソニへの出演も決定しております。『Tom Misch / Geography』をしっかり聴いて、是非遊びに行きましょう。同じUKの「Jorja Smith」、「Rex Orange County」も楽しみなラインナップ。